ブッダガヤのあるビハール州はインドで一番貧しい州です。また、インドで一番識字率が低い州です。スーリヤ校はそんな貧しい農村の子供達に教育のチャンスを与えることを目的としています。
生徒の保護者は、農作業の手伝いをして穀物を手に入れたり、工事現場で日雇いの労働をしたり、出稼ぎで遠い都会へ行きリキシャーの運転手をするなど、家庭の経済状況はかなり厳しい状態です。スーリヤ校の生徒たちは、放課後、家族の手伝いで農作業をしたり、夕ご飯を作るのを手伝ったりしています。ランプやロウソクの灯りで宿題をする生徒もいます。
この土の家に暮らす子供達は、スーリヤ校で教育を受け、なんと生徒の中にはインドで一番難しいIIT大学(インド工科大学)の受験を目指している生徒もいます。自助努力の精神で、努力精進し、夢に向かって頑張っています。
家庭での学習環境
教科書は生徒たちにとって、貴重な宝物です。生徒たちは手作りの本棚を作り、大事に保管しています。生徒たちの家のほとんどは土とレンガでできています。
「僕は市長になって、人々を助け、素晴らしい社会を創りたい。」
ほとんどの生徒たちは勉強机を持っていません。ベッド の上か床の上で勉強します。十分な照明を持っている家庭は少なく、 日が落ちる前や、ろうそくの明かり で勉強しています。生徒たちは規律正しく、勉強熱心です。彼らには将来の夢があります。夢を持てるようになったことは、 彼らにとっては奇蹟です。なぜな ら、教育を受けられなければ、彼らは この広い世界に様々な職業があることすら知ることがなかったからです。カースト制度が根強く残るインドで、教育だけが貧困から抜け出す希望なのです。 彼らが夢を実現し、世界をよくしていくことを心から応援しています。
放課後は家族のお手伝い
放課後、家族を助けて働く生徒もいます。彼らは 家庭教師をしたり、保護者の仕事を手伝ったり、料理など家事もします。多くの生徒は、ヤギや牛や水牛を散歩 に連れて行ったり、餌にする草を刈りに行き、頭に乗せて帰って来ます。 ある生徒は、村人に卵料理を作って売っていました。家族の手伝いも、勉強も一生懸命しています。
生徒の村、訪問 (2010)
ビハール州はインドで最も貧しい州でした。しかし、州政府が代わり、この5、6年 の間に劇的に良くなってきています。 安全で、平和で、ビジネスができる環境になりました。知識人や投資家が故郷に戻ってきました。ビハール州は驚くべき発展率を示していますが、まだまだ村の 人々は貧しいままです。州政府はインフラを整備したり、女の子が学校へ通えるよう、様々な政策を施行しています。2010年 2月、ブッダガヤを訪問した州 知事ニティッシュ氏と会うことができました。 私たちの活動に感謝し、これからも貧しい子供達への教育支援を継続してほしい、と いう言葉をいただきました。
生徒とその家族
私たちの学校はブッダガヤの中心地 から約3キロほど離れた場所にあります。生徒達は学校の近くの村や、5キロ、8キロ離れた村からも通っています。私は教 師達と生徒の家をよく訪問し、生徒の家庭での様子や生活状況を調査しています。そして、保護者にできるだけ宿題の時間を 作ってあげてほしいことと、毎日学 校に送り出すよう、頼んでいます。
生徒たちの保護者のほとんどは、季節労働者や小作人です。彼らの収入は少なく、家族が食べていくのも精一杯で、子供を教育す る余裕がありません。
教科書や制服は生徒たちにとって、宝物です。
保護者たちは子供達がスーリヤ校で教育を受けていることを誇りに思っています。子供達は未来への希望です。
家庭訪問2008 (Home visiting in 2008)
生徒の村
コロホウラ村(学校から1.5キロ、写真上)。バルア村(1キロ)。バップーナガル村(0.5キロ)。マフラル村(1.5キロ)。ティルカ村(5キロ)。オウラ村(7キロ)。
<家庭での食事>
一日3回食事ができる家庭はめずらしく、一日2回、一日一回だけ、食事なしの日もある家庭もあります。家族は一生懸命働いていますが、労働者の賃金は信じられないほど低く、満足な食事ができません。稲刈りなど、農業の季節労働の報酬として、現物支給が多く、わずかな米や麦はそんなに長くは持ちません。野菜は貴重です。
<親の職業とカースト>
生徒の親は、小作人が一番多く、日雇い労働者、リキシャー運転手、出稼ぎ労働者など。インドの田舎には、今でもカースト制度が根強く残っています。カーストというのは、ヒンドゥ教の階級制度のことで、先祖代々職業が限定されていました。貧しい者は貧しいままでした。しかし、新しい職業が増えた現代、教育を受け、能力を持つ者は、別の職業につくチャンスが出てきています。教育には、貧困の悪循環を断ち切る力があるのです。
家庭訪問 Home visit
不定期ですが、時々生徒の家庭訪問を行っています。 生徒たちの住んでいる村の様子や、家庭、生活を知るために、ランダムにいろいろな生徒の家を訪問しています。照明器具のない家も少なくなく、あっても裸電球くらいです。テレビのある家はとても珍しいです。主な燃料は牛の糞を乾かしたもの。レンガを使っている家はいいほうで、中には土と藁だけで作った家もあり、雨季の大雨の度に崩れてしまいます。
生徒の中には7キロ離れた村や5キロ離れた村から通う子たちがいます。ある時期、私が生徒に登録する条件として、勉強態度が熱心で、毎日休まず通学する子、と指定していました。まさかそんな遠くから通うなんて思わなくって、、、。5キロ離れた村からはみんな徒歩で通っています。私は家庭訪問に行ったとき、途中まで車で行きましたが、半分ほどで車が通れない道になり、村までさんざん歩きました。毎日通っている生徒たちは偉い!すごい!また、7キロ先の村からの生徒たちは、満員のローカルバスの屋根に乗ってきます。子供からは運賃を取らないそうです。でも、なかなかローカルバスを捕まえるのは大変で、早い時で30分、一時間以上かかっても乗れない時があるそうです。遠い村の生徒ほど、勉強に対する熱意がすごいです。彼らの親は、これだけ遠い学校に毎日送り出しているのですから、教育の大切さをよくわかっています。とことん貧しいけれど、そんな保護者もいるのです。貧しさから抜け出す方法は、教育しかありません。
菜の花畑が広がる農村。
ほとんどの家は土でできている。壁には一面、燃料となる牛の糞が丸く平らにして貼り付けて乾かされている。
電気は一応来ているけれど、土壁の家にはあっても電球だけ。みんなテレビも見たことがない。
村の子供たちに歌を歌ってもらうと、それは家に代々伝わる儀式の時の歌。おばあちゃんやお母さんから口伝えで覚えた歌。テレビや映画で流行っている音楽はほとんど知らない。
私たちが村へ行くと、どこからともなく集まってくる子供たちと村人。どうやら車が村に入ってくるのを見て、走ってきたらしい。めったに車なんて村に来ないから、それだけで珍しい。
しかも、外人(私)がいるから、もっと珍しい。最初は恥ずかしそうにしていたけれど、デジカメのディスプレイや、ビデオカメラのディスプレイで子供たちを映して、それを見せてあげたら、大騒ぎ。写真もあんまり取らないから、画面に映った自分たちを見て、大興奮。
村はブッダガヤに属するけれど、ブッダガヤの中心地からはかなり外れているので、村人は外国人をあまり見たことがない。それでも、私に普通に話しかけてくれる。ブッダガヤのヒンディ語はデリーのヒンディ語に比べて、関西弁くらいの違いがあるが、村の方言はさらにすごい。
なんとなくニュアンスでわかるけれど、スタンダードヒンディとはかなり違う。だから、子供たちと話すと、普通のヒンディ語では通じない時がある。
親もその親も学校へ行ったことがないし、テレビもないから、村の言葉しか知らない。
学校で、ヒンディ語の「あいうえお」からスタートだ!